人々は身分を証明するための写真だけでなく、人生の大切な瞬間を残すためにも写真館を訪れていました。写真館では赤ちゃんの百日祝いの写真や一歳の誕生日写真をはじめ、婚約や結婚写真はもちろん、人生最後を飾る遺影まで、人生の節目となる瞬間を写真に記録してきました。家族や世代の物語を伝え、時と記憶をそのまま残してきた写真館は、私たちの暮らしと密接に結びついた特別な場所でした。

『写真館の全盛時代』は、国立民俗博物館の写真館調査事業と連携し、写真館の変遷とその意味を振り返る展覧会です。町の写真館で働く写真師たちの語りを中心に、写真館の過去と現在を紹介しています。写真館には、写真を撮る人と撮られる人の物語が残されています。写真を通じて人生の一瞬一瞬を記録してきた人々の物語から、記録が持つ意味を問い、身近な過去の生活文化を振り返ります。

時代の流れと共に写真館も変化し、懐かしい町の写真館の姿を見ることは難しくなりました。しかし、人々は今も自分の姿や日常を写真として残したいという願いを持ち続けています。もしかすると今日も誰かが特別な瞬間を記録するために写真館を訪れているかもしれません。一枚の写真に込められた思い出、その記憶を辿りながら、古いアルバムをゆっくり開いてみてはいかがでしょうか。